国のエネルギー政策、気候変動対策の大きな方向性を決める議論が大詰めを迎えようとしています。概ね3年ごとに改定されるエネルギー基本計画について第7次の改定作業は進んでいます。並行して、地球温暖化対策計画、GX(グリーントランスフォーメーション)2040ビジョン、それぞれ策定作業が進んでいます。これらの素案が本年12月中に取りまとめられ、来年の2月頃までに閣議決定される見込みです。
これらの計画は日本の将来を左右するものであり、方向を間違えると日本の経済再生も遠のいてしまいます。自民党政権は2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を大目標としています。目標自体には賛成ですが、それをどのように実現するか、その方策には大きな問題があります。政府は自然エネルギーと原発をまとめて脱炭素電源というカテゴリーをつくり、自然エネルギーの重要性をうたいながらも原発についても将来的に欠かすことができないとの方針を打ち出しています。また、化石燃料の利用についてもその延命を前提とする政策が幅をきかせています。
日本の現在のエネルギー政策では、原発回帰と化石燃料の延命が目的化してしまい、より重要な自然エネルギーへの転換が遅れてしまっています。自然エネルギーの導入スピードは明らかに鈍化しており、今後の導入目標も他国と比べて低いレベルにとどまっています。真っ先に進めなければいけない省エネの取組も未だに不十分です。国会の熟議を通してこうした日本のエネルギー政策の問題点を正します。
原発は過渡的な活用に止めるべき
原発はあくまでも過渡的なエネルギーとしての活用に止めるべきです。その理由の一つは、経済合理性が失われていることです。原発新増設については建設コストが高騰しており、1基2兆円を超えるようになっています。世界では太陽光発電や風力発電の方が、蓄電池と組み合わせても原発や火力よりも安い電源としてその普及が進んでいます。また、新増設には20年超の期間が必要です。緊急を要する気候危機対策としては役に立ちません。
計画策定過程の議論にも問題があります。エネルギー基本計画は総合資源エネルギー調査会にて審議されていますが、委員の選定などに偏りがあり、需要側の企業の声や再エネ事業者の声は届きにくい構成になっています。市民や未来を担う若者の参加も得て議論を更に活性化し、結論ありきの審議会から脱却する必要があります。
データに基づく議論、電力需要の正しい予測が必須
AIやデータセンターの電力需要により、今後電力がひっ迫する、だから原発が必要だという主張がよく聞かれます。具体的にデーターセンターなどで使用される電気はどのくらいになるのか、その予測について正しく検討、議論されているとは思えません。
確かに新たな需要として、データーセンターの電力消費量を見込む必要はありますが、データを見ると現在のデータセンターの電力消費は、全電力消費の1%程度です。10倍になったとしても1割程度、そもそも省エネ技術も進みますのでそのまま10倍ということにはなりません。省エネと再エネの普及によりエネルギー供給できる範囲にあると言えるのではないか。調査を続けます。