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2025.09.23

太陽光発電は「メガソーラー」から「ソーラーシェアリング」へ

9月18日、小田原かなごてファームの小山田大和社長の案内で矢作の里(5号機)と開成あじさいの里(7号機)の2つのソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)を視察しました。小山田さんはソーラーシェアリングの先駆者として工夫を重ね神奈川一の発電実績を残しています。ソーラーシェアリングとは農地の上に適当な間隔を空けて太陽光パネルを設置、営農しながら発電を行う手法で、全国で展開が始まっています。

 最大の学びは、ソーラーシェアリングが「発電事業」ではなく「農業再生の仕組み」だという点です。荒廃農地を蘇らせ、地域で電気を作って使い、災害時には地域を守る電源にもなる、食料自給率とエネルギー自給率を同時に押し上げる、地域発の実践でした。

2つの営農型太陽光発電

 現場は、すべて低圧・小規模分散型(50kW未満)。森林伐採を伴うメガソーラー型ではなく、小区画の畑ごとに最適化した「地域分散ネットワーク型」です。

 電力は自家消費・PPA(特定の電力需要家と個別の売電契約を結ぶ手法)を中心に運用(12〜15円/kWh水準)。非常時には系統から独立し、地域へ無償供給する防災協定も確認しました。域外へ流出していた燃料費を地域内に循環させる大きな可能性があります。

 営農では、みかんと水稲(自然栽培)をパネル下で実施光飽和点の考え方(作物毎に生育に必要とされる太陽光の量に飽和点があるという考え方)を踏まえた適切な遮光が、作物の収量確保、品質や作業環境の改善に寄与しています。来期は水田区画の拡大を計画。評価軸を「収量だけ」から「収入・環境・防災・雇用」へ広げる必要性を、現場の成果が示しています。

 設計面では、藤棚式(高安全)と一本足工法(低コスト)を状況に応じて採用。物価高でコストは上がる一方、架台材の工夫、両面パネル、スクリュー基礎の標準化などで安全性と経済性の両立を図っていました。景観・林業再生を意識した木製架台の試験導入も、地域資源活用の有望な方向です。

制度面の問題

(1)荒廃農地の認定で収量規制が外れ、現実的な営農が可能になるが自治体によって対応が異なる

(2)農地転用の手続きと3年ごとの更新の負担が重く、専門家費用も発生。

(3)一時転用の更新制度、更新が認められなかったときの撤去リスクが融資を難しくし、採算性も補助なしでは厳しい—現場の共通の悩みです。実際の案件では、市・都の補助や越境PPAの活用、地銀・信金・公庫・農協の協調で事業化を果たしていました。

全国展開へ — 課題と解決策

・行政運用のばらつき:国が統一マニュアルを整備し、判断基準を標準化。

・申請・更新負担:更新期間の延長・段階的恒久化などで長期安定を確保。

採算・融資:PPA・自家消費型を支える補助と標準契約、信用補完(保証・保険)で与信を強化。

社会受容:景観配慮・地域材活用(木製架台)を加点評価。

評価指標:収量偏重から、収入・環境・防災・雇用を含むKPIへ転換。

防災:非常時の無償供給や系統切替を全国標準の運用手順に。

 ソーラーシェアリングは、荒廃農地の再生を起点に、食とエネルギーの自立を同時に進める新しい地域インフラです。環境破壊型のメガソーラーではなく、地域分散ネットワーク型で、景観・農業・安全性を総合設計することが成功の鍵です。私たちは、優良事例の知見を制度に反映し、農家と金融・需要家・自治体を結ぶ仕組みを国として整えます。日本の田畑を再び「はたらく大地」へ、全国の皆さんとともに進めてまいります。

矢作の里ソーラーシェアリング(5号機)藤棚式、みかんを育てています

開成あじさいの里ソーラーシェアリング(7号機)一本足式、お米を育てています、若干高さが足りなかったと言うことでした

直諫の会の仲間と視察しました。山崎の左隣が重徳和彦元政調会長