10月1日、超党派議連「公共事業チェックとグリーンインフラを進める会」として、東京外環道(東京外かく環状道路)の建設工事現場を視察してきました。2020年に調布市の区間で起きた陥没事故に関連して大深度地下法に基づく建設の問題点、課題をヒアリングしてきました。
2020年調布市陥没事故の経緯と原因
東京外環道の大深度トンネル工事において、2020年10月18日、調布市東つつじヶ丘地区で突然の地表陥没事故が発生しました。道路に直径約5メートル、深さ約5メートルの穴が開き、周辺住宅の敷地や建物に亀裂や沈下が生じました。現場はシールドマシン掘進区間の直上であり、住民の生活圏と直結する被害でした。
事故直後、国土交通省やNEXCOは「施工ミス」や「局所的な地盤特性」による異例の事例と説明しました。しかし、その後の調査により、シールド掘進に伴う地盤の緩みや空洞形成が原因であったことが明らかになりました。
さらに、事故後の調査では延長約30メートルに及ぶ大規模空洞が確認され、新幹線1台が入るほどの規模であったと報告されています。この事故は単なる施工不良ではなく、大深度地下法の「地上影響なし」という制度的前提を覆す象徴的な事例となりました。
陥没事故後の対応と現状
事故後、現場周辺では長期にわたり地盤補修が続いています。セメントスラリーの注入や杭打ち工事が実施され、京王線下や上下水道管の吊り下げ補強といった高リスク作業も行われています。その過程で振動や騒音が継続し、住民の健康被害や生活破壊が拡大しています。
また、事故を受けて裁判所が工事停止を命じ、シールドマシンは現在も地下で停止したままです。再稼働の見通しは立っておらず、事業計画は大幅に遅延しています。
大深度地下法の根本的問題
大深度地下法は「40メートル以深なら地上に影響なし」との前提で、補償を免除し、住民の同意を得ずに事業を進めることができる仕組みです。しかし調布事故は、この前提が虚構であることを明確に示しました。
住民団体の要請書(2025年9月17日付)では、地表面変位データの公開が不十分で、工事の影響が隠されていることが強く批判されています。事業者が示す「傾斜角1000分の1(1/1000rad)」という管理値は家屋被害が発生する恐れのある数値であり、安全性の保証には到底至りません。にもかかわらず国や事業者は、今回の陥没を「異例の事故」として矮小化し、制度そのものの見直しを避けているのです。
住民生活と地域への影響
陥没事故以降、現場周辺の住民生活は大きな打撃を受けています。多くの住宅が解体されて仮設道路に置き換えられ、街並みは一変しました。健康面でも被害が深刻で、低周波振動による頭痛や耳の圧迫感、膝の痛みの悪化などが報告され、自宅での生活が困難となりホテル避難を余儀なくされた住民もいます。また、事故後の地域コミュニティは脆弱化し、孤独死の事例も確認されるなど、生活基盤そのものが揺らいでいます。
誰のための公共事業なのか
今後、大深度地下法の見直しを含む抜本的な法制度改革を進めることが不可欠です。あわせて、工事データの全面公開や、より厳格な安全基準の設定、被害住民への迅速な補償と救済、そして住民参加型の協議制度の構築が求められます。
外環道事業の行方は、単なる道路整備の是非を超えて、日本の公共事業が「誰のためにあるのか」を根本から問い直す試金石です。国民の権利と安全を守る政治の責任が、今まさに強く問われています。
