国立公園のすぐ外で進む太陽光発電計画
北海道釧路市の釧路湿原国立公園すぐ外の民有地で、大阪市の企業、日本エコロジーが数千枚の太陽光パネルを設置するメガソーラー計画を進めています。国立公園の保護区域外のため規制も及ばず、工事が進行しています。しかし、現場周辺ではタンチョウやオジロワシなど希少な野鳥が生息しています。重機の騒音で湿原の静けさが失われ、生態系への悪影響が懸念されています。専門家も工事の即時停止を訴えています。また、建設地の森林を許可なく造成していたことが発覚し、北海道庁が違法工事の中止を勧告しましたが、事業者は工事を止める考えを示さず、市民から強い批判が上がっています。
釧路湿原の自然破壊については2024年7月に現地を視察、保護の必要性を訴えてきました。気候変動対策の柱であるはずの再生可能エネルギーが地域の自然や生活に悪影響を及ぼしている現状は本末転倒であり、釧路湿原の問題は持続可能なエネルギー社会を実現する上で無視できない教訓となっています。
法制度の抜け穴が許した開発
この事態を許した背景には、再生エネルギー推進策における法制度の抜け穴がありました。主なポイントを見てみます。
1 保護区域の外は無防備: 釧路湿原は国立公園として厳重に保護されていますが、そのすぐ外側は開発規制がなく、湿原の一部であっても法律上は太陽光施設の建設が可能で、景観や生態系に影響が及ぶ恐れがあっても止められませんでした。本来は国立公園周辺に自然を守る緩衝地帯を設けるべきでしたが、それが欠けていたのです。
2 環境アセスメントの網をすり抜け: 大規模事業には環境影響評価(環境アセスメント)の実施が義務づけられます。しかし、事業規模が小さく基準未満だったため対象外となり、事前の十分な環境調査や情報公開は行われませんでした。地域住民が計画を知ったのは工事開始後でした。
3 再エネ優遇策の副作用: 2012年導入の固定価格買取制度(FIT)によって全国でメガソーラーが急増しましたが、自然環境や地域との調和は後回しでした。再エネが「手軽に儲かる」ビジネスとなり、各地で乱開発を招いた面があります。
自然と調和する再エネ導入へ
再生可能エネルギー自体は脱炭素社会に不可欠ですが、その導入方法を見直す必要があります。環境を破壊しないために、次のような方策が求められています。
1 分散型・地域主導の発電: 山林を切り開かずに、屋根上や農地など、既存のスペースを活用する分散型の小規模発電へ切り替えるべきです。地域が主体となれば自然を守りつつ、利益も地元に還元できます。営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)を活用すれば農業の再生も実現できます。
2 環境影響評価の強化: 再エネ施設の設置前に、規模にかかわらず森林伐採の有無や生態系・水害への影響を厳しくチェックする仕組みを設けます。小規模な事業でも環境アセスメントを義務づけるなど、「設置ありき」ではなく「自然と共生できるか」を基準に審査する体制が必要です。
3 技術革新とリサイクル: 太陽光パネルのリサイクル技術を進展させ、将来の廃棄物問題に備えます。また、高効率パネルや蓄電池の導入で、少ない面積で発電できるようにします。
4 地域での合意形成と透明性: 事業者は計画段階から地域住民に計画内容や景観・農業・観光等への影響を説明し、十分な情報公開と話し合いを行うべきです。また、自治体が開発を禁止するエリア(ネガティブゾーン)を事前に設定できるようにすることも有効です。
こうした取り組みを実現するには、政府の政策見直しが不可欠です。屋根設置や農地・工場跡地の活用を優先し、逆に森林を伐採する開発には厳しい制限をかけるなど、質を重視した再エネ導入の基準を設ける必要があります。自然と調和する再生可能エネルギー導入を目指します。

地元で釧路湿原の保護活動をしている皆さんと現場を視察(2024年7月)

釧路湿原の自然保護区の周辺で進む太陽光発電所建設