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2025.09.10

世界の最先端科学技術の現場を訪問、日本企業・日本人技術者の奮闘にエール

国会閉会中の期間を使って、日本国内外を視察しています。専門の環境エネルギー・産業政策に関する様々な現場を訪問し、現地で関係者の皆さんの話を直接伺い、議論させていただく貴重な機会をいただきました。

 本年は理事を務める経済産業委員会の視察メンバーとして、ポーランド、ドイツ、フランスを訪問してきました。ポーランドでは、戦禍にあるウクライナに対して復興支援を模索している日本企業の皆さんのお話を聞いたほか、ドイツではクローズドループと言われる新しいタイプの地熱発電所の建設現場を訪問、フランスでは核融合実験炉イーターの建設プロジェクトを視察するなど、それぞれ貴重な情報をえることができました。

 今回はそのうち、フランス南部に建設中の核融合実験炉「イーター(ITER)機構」視察について報告します。イーターは、太陽と同じ原理で莫大なエネルギーを得る「核融合」を人類が実証するための国際協力プロジェクトです。視察の内容に加え、核融合の仕組みや原子力発電との違い、日本の貢献、そして今後の課題と期待についてまとめます。

核融合とは何か

 核融合は、軽い原子核同士が融合してより重い原子核になる際にエネルギーを生む現象です。燃料には海水に豊富に存在する重水素や、リチウムから生成できる三重水素が用いられます。燃料1グラムから石油8トンに匹敵するエネルギーを取り出せる可能性があるほど効率的で、副産物は無害なヘリウム。二酸化炭素や高レベル放射性廃棄物をほとんど出さず、安全で環境に優しい「夢のエネルギー」とされています。

 ただし、この反応を地球上で起こすには、燃料を1億度以上に加熱してプラズマ状態にし、原子核同士を衝突させる必要があります。そのため「磁場」で、プラズマを壁に触れさせずに閉じ込める技術が鍵となります。最も有力とされるのが「トカマク型」と呼ばれる方式で、イーターはその最大規模の実験炉です。

核分裂の原発との比較

 核融合と、すでに商業化されている核分裂型の原子力発電にはいくつかの重要な違いがあります。

仕組み・・核分裂はウランやプルトニウムなど重い原子核を分裂させる反応。一方、核融合は重水素や三重水素といった軽い原子核を融合させる反応です。

安全性・・核分裂は連鎖反応を利用しており、設計上は制御されているものの「暴走」のリスクが存在します。核融合は燃料の供給を止めれば自然に止まり、原理的に暴走はありません。

廃棄物・・核分裂は数万年にわたって管理が必要な高レベル放射性廃棄物を生じます。核融合は装置の一部が中性子により放射化されますが、管理期間ははるかに短く、環境負荷は小さく抑えられます。

燃料資源・・核分裂の燃料であるウランは偏在していますが、核融合の燃料である重水素やリチウムは海水から広く得られるため、エネルギー資源をめぐる国際的偏りを解消できます。

 核融合は「より安全で持続可能な次世代エネルギー」として期待されています。

イーター計画の概要

 イーターは「国際熱核融合実験炉(International Thermonuclear Experimental Reactor)」の略称で、欧州連合、日本、米国、中国、韓国、ロシア、インドの七つの極が協力する国際プロジェクトです。冷戦時代の米ソ首脳会談をきっかけに始まり、「平和のための科学協力」の象徴として進められてきました。ウクライナ戦争で問題のあるロシアもメンバーの一員であり、必要な協力関係は維持されています。

 本計画の目標は、プラズマに投入するエネルギーの10倍(Q=10)の核融合出力を実現することです。これが達成されれば、初めて「核融合で発電できる」という実証になります。直径30メートル、重さ2万3千トンという巨大装置をミリ単位の精度で組み立て、1.5億度のプラズマを安定的に維持する、まさに人類最大規模の科学技術的挑戦です。

視察の内容と印象

 私たちは現地で、まず日本人職員からイーター計画の全体像について説明を受け、その後、防護具を着用して建設現場を視察しました。直径30メートルの「トカマクピット」には、すでに日本製の超伝導コイルが設置されており、その精密さとスケールには圧倒されました。見学後の意見交換では、日本人職員が国際的な最前線で奮闘している姿を確認し、日本の貢献の大きさを改めて実感しました。

日本と日本企業の役割

 日本はイーターにおいて、超伝導コイルやダイバータといった最難関の機器を担当しています。富山県の遠隔保守機器のスギノマシンや大和合金といった中小企業も、高度な加工技術で重要部品を提供しています。日揮(JGC)は、部品供給にとどまらず現地での組立や運転支援にも協力的であり、「ものづくり」だけでなく「大規模システムの構築」に日本企業が一層関与する重要性を示しています。

 一方で、中国企業が国の支援を受けリスクを背負って組立に積極的に関与しているのに比べ、日本企業は慎重な姿勢をとったままです。今後、日本が国際競争の中で存在感を高めるには、部品製造に加えて統合や運用段階への参画が不可欠です。

核融合がもたらす未来

 核融合燃料は海水から無尽蔵に得られるため、エネルギー資源の争奪を不要にし、安定した国際社会の構築に貢献できます。

 しかしながら、 実際に核融合発電が商業的に利用されるまでには、どんなに早くても30〜50年かかる見込みです。核融合から生み出されるエネルギーを利用できるのは次の世代と言えます。喫緊の課題である地球温暖化対策には間に合わない現実があります。  

 一方、研究の過程で生まれる超伝導、極低温技術、高耐熱材料、遠隔ロボット工学など、研究の副産物として多くの技術革新が期待されます。また人材育成、国際的な連携こそが短中期的な成果と言えます。 

 日本は部品製造力を活かしつつ、統合・運転段階に積極的に参画し、技術波及と国際的地位の向上を目指すべきです。核融合の実現は長い道のりですが、その挑戦は「科学によって平和を創造するプロジェクト」といえます。

真空容器セクターモジュールの設置が進んでいました。日本企業が製造に深く関わる超伝導トロイダル磁場コイル、核融合炉の心臓部に当たりま

私が15年間勤務していました日揮株式会社(JGC)が参画していました。