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2021.10.19

「自然エネルギー立国」へのロードマップ:エネルギー転換戦略 [4]

5つの重点施策、35の目標と政策 (続き)

5.過酷事故を二度と繰り返さない、次世代に責任を持つ原子力政策に舵を切ります

 10年を迎えた今日にあっても、東京電力福島第一原発事故の収束の目途は立たず、汚染土壌の取扱、汚染水問題、デブリの取り出しなど廃炉作業は困難を極めています。原子力発電の過酷事故のリスクは決して小さいものではなく、原子力発電の今後については一企業の経営にゆだねるのではなく社会的な合意に基づき国が責任を持ち、決めてゆかなければなりません。核廃棄物、使用済核燃料の最終処分方法も定まっていないなど、事故を起こさなくても次世代に大きな付けを残し続ける原子力発電については、その速やかな運転停止と廃炉決定を目指します。

  • 東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(国会事故調)を復活させ事故原因の究明を再開し、事故に対する責任を明確化します。
  • 東京電力福島第一原子力発電所事故の一刻も早い収束、区域外避難者を含む全ての原発事故被災者の真の生活再建を、東京電力の責任を明確にしつつ国主導で実現します。地域に大きな影響を与える汚染水問題、いまだ不安の広がる健康問題など、地域関係者、被災者の声に耳を傾け、東京電力に責任ある対応を求めます。
  • 原子力発電については、新増設は認めず、速やかな運転停止と廃炉決定を目指します。
  • 東京電力福島第一原発事故の検証や実効性のある避難計画の策定、地元合意のないままの再稼働は認めません。
  • 核燃料サイクル事業の中止に向けて、関係自治体との協議の新たな枠組みを構築、協議を開始します。使用済み核燃料は再処理は行わず直接処分とします。
  • 使用済み核燃料について、速やかにドライキャスクによる乾式貯蔵に移行します。乾式貯蔵期間を使い、最終処分に関する技術開発を進めるとともに、最終処分方法の検討を進めます。
  • 原子力発電所(事故炉をのぞく)の廃炉については、原子力発電所の速やかな運転停止、廃炉決定を実現するために、原発の国有化案や電力会社所有のまま国が適切な財政支援を実施する案などを視野に、国の監督下で実施する体制の構築を目指します。原発廃炉にともない債務超過が発生するなど、電力会社の経営が立ちゆかなくなる事態のないように配慮します。
  • 原発立地自治体の自立に向け、原発に頼らない地域経済の基盤の確立、経済活性化、雇用の公正な移行、地域主体のまちづくりを支援します。原発運転に対して支払われていた交付金については、廃炉作業に対しても継続的に交付します。原発立地地域を新エネルギー導入促進特区に指定、原発用に設置された大容量の送電網を有する強みを活かし、新エネルギー関連産業の集積地へ転換させます。
  • 原子力関連産業については、長期にわたる廃炉および放射性廃棄物の管理・処分に関わる事業が継続できるように、雇用の維持と人材育成のための支援を継続的に実施します。廃炉および放射性廃棄物の管理・処分に関わる技術開発について各電力会社、関連メーカー、研究機関等に分散している技術者・研究者の連携を図り、研究費等による支援を計画的に実施して、研究開発をバックアップします。また、新分野への移行が求められる人員については雇用の公正な移行が図られるよう支援します。
  • 世界が原子力発電所の廃炉時代を迎えるにあたって、原発事故の経験、廃炉技術等をパッケージ化して、既存原発の安全対策、廃炉事業の輸出を目指す廃炉ビジネスを推進します。