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2022.01.10

バイオマスで地域分散型熱供給、森も元気にするプロジェクト

長野県茅野市の 東急蓼科リゾート のゴルフ場に入っているバイオマスボイラーを視察しました。リゾート内660haの森から排出される間伐材を燃料にして、灯油に変わる熱供給を実現しています。ゴルフ場の温浴施設のために年間400万円ほどかかっていた燃料代が、約半分以下になる。当初の設備投資は6000万円ほど、その約半分、国の補助を得て10年以内の投資回収を目指しています。(補助がないケースを想定すると20年程度での投資回収となる)間伐材、木材の搬出作業は地元の森林組合が請負、森林経営計画を策定して、持続可能なバイオマス資源の供給を可能にしています。

森林を整備しながら、間伐材を燃料にすることで燃料コストの削減、CO2の排出削減が実現できるモデルであり、林業の支援にもつながります。日本全体の広葉樹林の7割を15年サイクルで循環させることで6,925万トンのチップ製造が可能、針葉樹林からは林地残材800万トンが出ることから、合わせて年間7,725万トンのチップを得ることができます。このチップの活用で7,337万トンのCO2が削減されることから、2013年比で約5%のCO2削減の効果が期待できます。差し迫る2030年のCO2削減目標に対して極めて有効な施策になります。全国での展開を支援してゆきます。

バイオマス熱供給の成功のポイントは以下の通り

○ 熱利用に近いところで集中的に熱を発生させる仕組みが有効、欧州の地域熱供給のような仕組み有効ではあるが日本では熱供給のインフラ整備にお金がかかるため事業化は難しい。

○ ボイラーについてはオーストリアのETA社のボイラーを使用している。130kwのボイラーを2機設置、全自動でチップの供給から運転制御までコントロールができ、ボイラー管理者なども特に不要。完全燃焼により排気もクリーンであり燃焼後の灰も極めて小さくなる。(体積で1/100)燃料は50立方メートル/月を使用(トラック5台分をサイロに保管)

○ 蓄熱槽を活用することで熱を蓄えることができる。熱需要の変動に対応することができるようになっており灯油ボイラーなどの補助熱源も必要がない。

○ 燃料にはリゾート内の間伐材を使用、保全間伐に位置付けることで間伐に対する補助金により運営ができている。燃料製造側の補助が有効に効いている。間伐材は1年間の自然乾燥後、チップ化している。(含水率は35%以下)、含水率の高い針葉樹については葉枯らしが有効(切ったままはの付いた状態で放置する)広葉樹についても燃料化を進める。都市部の剪定枝も活用することが可能。(千葉市では年間2万トン)

○ 「もりぐらし」という東急のポリシーに基づいて計画的に運営ができている。

ETA社ボイラー、コンパクトで完成度が高い、扱いやすい
蓄熱槽、攪拌せずに温水を保管することで高温から低温まで熱を取り出すことができる
燃料チップの供給メカニズム、シンプルな機構で自動的に燃料を投入することができる
間伐が進む森、日が差し込み生育が進む。これまで手付かずであった森林がこの事業を契機に整備されることになった