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2023.04.27

時代に逆行する岸田GX、原発依存から再エネへの転換を

気候危機が世界を襲っています。激化する豪雨や台風、干ばつや異常高温、世界各地で大きな被害が発生、日本も例外ではありません。二酸化炭素排出を劇的に削減し、脱炭素社会を実現することが世界共通の目標となっています。

 岸田政権は気候危機対策として、グリーン・トランスフォーメーション(GX)の基本方針を定め、GX推進法とGX脱炭素電源法の2法案を提案していますが問題があります。

 岸田GXの大きな柱として、再生可能エネルギーの導入拡大と原発回帰を決めました。原発の再稼働推進、次世代革新炉と称して原発の新増設を決めるとともに、40年で原則廃炉という運転期間の制限を緩和、停止期間を含めて60年を超える運転を認めるルール変更を断行しようとしています。あわせて、原発延命を国が支援する枠組みを作ろうとしています。

 時代の流れに逆行する原発回帰の岸田GXについて、本会議の反対討論に立ちました。以下、そのお訴え全文です。

原発回帰の岸田GX

 エネルギーはいうまでもなく私たちの暮らし、産業、社会に不可欠なインフラであり、その安定供給は国がその責任を担う重要分野です。薪から石炭、石油、ガスなど化石燃料へ、そして原子力へ。さらに今、気候危機を受けて、再生可能エネルギーへとシフトしようとしています。人類の発展と共にエネルギー源も変化し、産業もエネルギーと共に育ってきました。私たちはこうした歴史的な変化の中にエネルギー政策を位置づける必要があります。

 さらにウクライナ戦争を受けて、世界は資源産出国に依存する化石燃料から、エネルギーの自給自足を可能にする再生可能エネルギーへのシフトを加速化しようとしています。武力攻撃の目標となる原発はその存在自体が国家安全保障上のリスクであるとの認識も広まっています。

 例えば独は4月15日に残っていた3基の原発を停止し、脱原発を完了しました。それと合わせて再生可能エネルギーの導入目標を引き上げ、2030年までに電力の80%を再生可能エネルギーにすることを決め、化石燃料からの脱却を加速化しています。

 世界が、再生可能エネルギーへのシフトを加速化しているのに、岸田政権は日本独自の路線を取ろうとしています。それが、原発回帰を中心とした岸田GXです。衰退する日本産業の再生の道がこの選択肢なのでしょうか。この方向性で日本は発展できるのでしょうか。

原発に不適な地震大国日本

 日本は地震大国であり、もともと原発の運転には適していません。日本の原発の耐震基準は、住宅メーカーの基準よりも低く、1000ガルを超える地震が頻発する日本では全ての原発は常に過酷事故のリスクにさらされています。また、国家間の緊張が高まっていると言われる中で、武力攻撃の目標とされる原発を日本は動かし続けて良いのでしょうか。

 東京電力福島第一原発事故から12年が過ぎましたが、いまだに原発事故は収束に至っていません。つぎつぎと問題が発覚しています。1号機では圧力容器を支える土台のコンクリートが広範囲に亘って溶け落ちてしまっていることが判明、地震に耐えられるのか再評価が必要な状況です。廃炉現場は大変厳しい状況が続いています。原発回帰を決めるのであれば、この東京電力福島第一原発事故の収束に目途をつけ、全ての被災者の完全な生活再建を実現してからにしてください。いまも被災のただ中にある福島の皆さんにご納得いただくことはできません。国民の理解は得られません。

再生可能エネルギー大国日本

 一方で、日本は再生可能エネルギー大国です。環境省が昨年4月にまとめた「我が国の再生可能エネルギー導入ポテンシャル」調査では、我が国には電力供給量の2倍の再エネポテンシャルがあるとの結果が報告されています。例えば営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)と蓄電池を組み合わせて導入することで日本のエネルギー消費の大きな部分を安定供給することが可能です。太陽光のみならず、風力、水力、地熱、バイオマスなど大きなポテンシャルを有するのが日本です。厳しいエネルギー事情にあるいまこそ、再生可能エネルギー導入に高い目標を掲げるべきです。中長期的には「再エネも原発も」ではなく「再エネ」です。日本が選ぶ道は、原発依存からの一日も早い脱却、再生可能エネルギーへのシフトしかありません。

成長分野に背を向ける日本

 世界で大きく成長している再生可能エネルギーや蓄電技術などの分野を、国はもっと後押しすべきです。原発の市場は再エネに比べて極めて小さく限られています。安倍政権下、トップセールスで進められた原発輸出はことごとく失敗、実績はゼロです。せっかく日本がリードしていた太陽光パネル、風力発電装置、蓄電池などの技術分野でしたが、いま市場を支配しているのは中国や韓国の企業です。日本の最後の砦である自動車もEV化に乗り遅れ厳しい状況です。自公政権の産業政策は失敗の連続です。世界は日本の都合で動いてはくれません。岸田政権の都合を忖度してくれません。与党の皆さんにはこうした不都合な真実にしっかりと向き合っていただきたい。

GX脱炭素電源法の問題点

 東京電力福島第一原発事故を教訓に安全最優先といいながら、運転期間の定めを利用政策だとして規制の対象から外そうとしています。運転停止期間も加えて60年を超える運転を認めようとしています。どんな厳格な検査も完全ではないことを考えると、高経年化した原発を停止するのではなく運転することが、安全の後退であることは誰の目にも明らかです。

東京電力福島第一原発事故を教訓に定められた原子力安全規制の柱である、重大事故対策の強化、バックフィット制度、40年運転規制、そして規制と利用の厳格な分離について、これらに変更を迫る立法事実は存在せず、堅持しなければなりません。

 今回の原子力基本法改正では、原子力産業への支援が「国の責務」「基本的施策」として詳細に規定され、原発依存を固定化するものとなっています。どんな支援を予定しているかも定かではありません。経済合理性を失った原発を動かし続けるために、国がお金を出すということなのでしょうか。

 こうした国の支援は再生可能エネルギーの導入にこそ注がれるべきです。著しくバランスを欠く原発優遇は、再生可能エネルギーへのシフトを遅らせる要因ともなり大きな問題です。

 長期にわたる対応が必要となる原発廃炉や使用済核燃料の廃棄問題に関する国の関与と協力を明確にすることは重要ですが、原発延命のための原発優遇は全く次元の異なる問題です。

オール日本で真のGXを

 GXの推進を、低迷する日本経済の復活のチャンスにしなければなりません。GX、エネルギー政策については国民的議論が必須です。政府が進めている経産省主導のGXはこの点が決定的に欠けています。経産省の産業政策はことごとく失敗に終わっている。国は過去の反省を踏まえて、大企業だけでなく、広く有識者や中小企業、働く皆さんの声、国民の声を集めて真のGXを実現するよう、強く求めて反対討論と致します。

神奈川新聞 2023年4月28日朝刊