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2023.04.20

政府が進めるGXの「G」は 原発の「G」、原発回帰を許さない

岸田総理のGXは原発、化石燃料の延命を支援するもの

 岸田政権はグリーントランスフォーメーション(GX)と称して、脱炭素社会を実現するための施策を進めようとしています。昨年7月に突如立ち上がったGX実行会議(岸田総理、経産省が集めた関係者による会議)によって基本方針が策定されその方針に基づいて、GX推進法案とGX脱炭素電源法案の2つの法律案が国会に提出され審議されています。

 産業革命以来の化石燃料中心の経済・社会、産業構造をクリーンエネルギー中心に移行させ、経済社会システム全体の変革を目指すのが、グリーントランスフォーメーション(GX)です。気候危機への対応として待ったなしの状況にある世界において、この方向性はきわめて重要であり、日本も真の意味でのGXを前に進めなければなりません。

 しかしながら、政府のGX基本方針をみると、火力発電所の延命、原発回帰がその柱となっており、肝心の省エネや再生可能エネルギーの導入などへの支援は極めて限定的となっています。これでは日本の脱炭素化は遅れるばかり、GXによる産業活性化、経済成長も望めません。

GX推進法案の問題点

 GX推進法案については、国債を発行しGXへの投資を進めるための枠組み、二酸化炭素排出に対して一定の負担を課すカーボンプライシング制度を規定していますが、その中身には問題があります。

 第一に、投資の規模についてです。政府はGX経済移行債を発行し、10年間で20兆円規模の投資を行うとしていますが、償還プロセスについて、再エネ賦課金、石油石炭税の減額分を充てるとしており、投資額について実質的に制限がかかる構造となっています。これでは必要な規模の投資に繋がりません。

 第二に、GX推進戦略を経産省が策定、また新設されるGX推進機構の設置運営も経産省に委ねられておりブラックボックス化が懸念されるなど、経産省にGXを白紙委任するに等しい制度となっています。失敗を繰り返してきたこれまでの経産省の産業政策からの脱却が期待できません。

 例えば本法案のベースとなるGX基本方針には、次世代革新炉として「高温ガス炉・高速炉の実証炉の開発・建設・運転等」が投資対象に含まれるなど、原発依存低減という基本的な方向性に反する政策が盛り込まれている点など大きな問題です。

 また、戦略策定において地域の声や地方自治体、有識者などの提案をうける仕組みがありません。政労使が関わる社会対話の仕組み、戦略策定プロセスの透明化を担保する規定もなく問題です。

 第三に、政府が提案しているいわゆるカーボンプライシングについて、その導入のタイミングが極めて遅く、負担の程度も小さく、その効果が期待できない点が問題です。G7は2035年までに電力部門の「全ての、または大部分の」脱炭素化で合意していますが、本法案では化石燃料賦課金については2028年度から、特定事業者負担金については2033年度からのスタートと2035年の目標に対してほとんど寄与しないものといえます。また、政府が想定する炭素に対する負担額はCO2-t千数百円程度であり、IEAが試算する炭素税額の10分の1以下です。これではカーボンプライシングの凍結に等しいと言えます。

GXは最後のチャンス 

 現下の気候危機への対応、脱炭素社会の実現は地球規模の要請です。IPCCの最新の議論も踏まえるとその対応の先送りは許されず、効果ある施策を優先的に実施してゆくことが求められています。GXの推進には最大限の資源を投入し、今すぐ具体的なアクションをおこすべきと考えます。

 GXに向けた構造変革において、大企業のみならず中小企業もしっかりとその強みを活かしつつ役割を果たせるようにする戦略、地域経済を活性化する戦略が必要です。変革の主役は働く皆さまであり、それぞれの持てる力を存分に発揮できるよう、雇用の公正な移行を実現することがGXを成功させる根本的な要件となります。

 立憲民主党は、GXを日本復活の最後のチャンスと捕らえ、既存の政策の延長にとどまらない大胆かつ実効性のあるGX戦略の立案と必要な規模の投資の実施を提案します。

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