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2023.06.08

トラブル続発のマイナンバー、 健康保険証の存続を求めます

トラブル続発のマイナンバー

 来年秋に現行の健康保険証の原則廃止などを盛り込んだマイナンバー法など関連法改正案が6月2日の参院本会議で、賛成多数で可決、成立しました。

 一方で、マイナ保険証に別人の情報がひもづけられたり、給付金などの公金受取口座で誤登録があったりと、トラブルが相次いでおり、マイナンバーカードの導入を急ぐあまり、システムおよび運用の構築に多くの不備があることが明らかになっています。

 最初に問題になったのは、コンビニでの証明書の誤交付でした。住民がマイナカードを使い、住民票や戸籍証明書の交付を受けようとしたら別人のものが発行されるというトラブルが発生、3月下旬以降、横浜市をはじめ複数の自治体で発覚し、システムを納入した企業が再点検している状況です。

 続いて健康保険証について別人の情報が誤って登録されるというトラブルが発生しました。受診履歴や医療費、薬剤情報が他人に閲覧されるケースも報告されており、個人情報の流出がおこってしまった事案です。

 さらには、給付金などの公金受取口座が別の人のマイナンバーに登録されたり、「マイナポイント事業」でポイントが別人に付与されてしまったりという問題も明らかとなりました。

デジタル庁の責任は重大

 こうしたシステムエラーが実際に国民の皆さんが使い始めて発覚するということ自体、システム構築のマネジメントに大きな問題があるといえます。個人情報を扱うシステムであり、全国展開をはかるということであれば、事前の徹底的なシステムテスト、運用テストを行わなければなりません。

 コンビニの証明書発行システムでは実機(現場で住民の皆さんが利用する環境)を使ったテストができていなかったという説明もあり、住民の皆さんが実際に利用する環境で再テストを行うように要請しました。導入を急ぐあまり、システムテストのような基本的作業が十分にできていないことは大問題です。

 また、公金受取口座の誤登録やポイントの誤付与は昨夏から起きていたにもかかわらず、今年5月まで担当大臣に未報告だったとのこと。マネジメント体制ができていないことも問題です。派手なパフォーマンスに走るのではなく、地道な作業を大切にしてもらいたい。

 発覚したトラブルは氷山の一角の可能性が高いと言えます。マイナカードのシステムを含めて、システム構築プロジェクト全体の抜本的な見直しを政府には強く求めてまいります

消される健康保険証

 さらに大きな問題は、来年秋の健康保険証の廃止とマイナ保険証への移行の決定です。利用者や医療・介護現場の不安を置き去りにしたまま、法律だけが成立してしまいました。

 そもそも高齢者や障害者が円滑にカードを取得し利用できるのか。認知症の人の意思確認や暗証番号の扱いはどうするのか。高齢者や障害者の施設では、健康保険証を預かっている例も多いが、マイナ保険証で同様の運用ができるのか。疑問に政府は十分に答えていません。

 カードを持たない人には、保険の「資格確認書」が発行されるとしていますが、本人の申請が原則で1年ごとの更新も必要になります。そもそも現行の保険証の使用を認めれば、問題は解決できるはずです。

 受付の機器の故障やシステム障害があった場合にどのように対応すれば良いかも明確になっておらず、医療現場からは大きな不安の声が上がっています。

国民本位のシステム構築を

 健康保険は、日本の社会保障制度の根幹です。マイナ保険証への切り替えは十分に時間をかけ、切り替えが可能な希望者から順次進めるべきです。様々な問題が解決され、切り替えが完了するまでは、少なくとも現行の保険証を並行して使用できるよう強く求めます。

 もともと任意であったはずのマイナカードの取得ですが、マイナ保険証への移行で、事実上、取得が強制されることになりました。マイナンバー制度は本来国民のためになるものでなければならず、国民に負担や不利益をもたらす導入は本末転倒です。住基カードなどの二の舞にならないように、ここはしっかりと立ち止まり、国民本位のシステムの活用、DXとなるように強く求めます