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衆議院経済産業委員会質疑にて
2024.04.06

化石燃料依存からの脱却 いまこそ産業構造の抜本改革を

水素社会推進法、CCS事業法の法案審議にて質疑に立ちました

水素社会推進法は水素および水素から作られるアンモニア等を「低炭素水素等」と位置づけて化石燃料に替わるエネルギーとして、その活用を推進することを目標としています。水素の製造から運搬、貯蔵、使用までのサプライチェーンの構築を支援するほか、化石燃料と比較して割高となる水素に対して、その価格差を補填する補助金制度などを作ります。

また、CCS事業法は、CO2を分離回収して地中に埋めて固定化する技術であるCCSを推進するための安全基準や各種規制の創設、地下に貯留されたCO2のモニタリングを官民で協力して行う仕組みなどを規定するものです。岸田政権が掲げるGX(グリーントランスフォーメー化石燃料依存からの脱却いまこそ産業構造の抜本改革をション)の一環として提出されたもので、重要な柱と位置づけられています。
3月22日の衆議院経済産業委員会では以下のような問題点を指摘しました。

そもそも産業構造の抜本的な変革を目指すべき

これらの法案の議論の前提として、①抜本的な産業構造変革に舵を切るのか、②既存の産業構造維持を選択するのかが問われています。日本の産業界は変化を嫌い現状維持に走っているのではないか。変革が必要なことは理解しているが時間稼ぎをしたいと考えているのではないか。水素活用もCCSも基本的に既存の化石燃料依存の産業構造維持のための技術と位置づけられ、今回の法案もそのための支援という性格が強い。その点が大きな問題です。

水素は、電気で代替できない産業用の高温、水素還元製鉄等、トラックやバス、船舶、航空機等のエネルギー源として限定的に利用すべきです。発電等に用いることはエネルギー効率の面から合理性はありません。

限られた資源、財源を本来であれば、産業構造変革に注ぎ込むことこそ日本の成長につながると確信しています。そうした決断が出来ないまま、ずるずると衰退しているのが日本です。

グレー水素をいつまで使うのか

水素については使用時にはCO2を排出しませんが、例えば石炭や天然ガスから水素を製造する場合は製造時にCO2を排出することになり、そのままでは脱炭素燃料とは言えません。

現在、輸入されている水素はほとんどが化石燃料からつくられ製造時にCO2が発生している「グレー水素」と呼ばれるものです。製造時に発生するCO2をCCSにより排出しないようにした水素を「ブルー水素」、再生可能エネルギーを使った電気分解によって作られた水素を「グリーン水素」と呼んでいますが、こうした水素への転換を図らなければなりません。この転換の道筋、戦略は省令に規定されることになっていて、法律では明確になっていません。

問題はコスト

水素もCCSも複雑なプロセスを経て実現される技術です。例えば再生可能エネルギーをそのまま電気エネルギーとして利用するのと比べてコスト高になります。政府は利用が拡大すれば価格が低下する、技術開発によりコスト削減が可能と説明しますが、具体的にどう実現できるのか見えていません。現在の価格を10分の1程度に圧縮することが目標とされますが、本当に実現できるか疑問があります。こうした未知数の技術に投資し依存度を高めることが妥当かどうか、国会でさらに議論して参ります。

報告:JERA碧南火力発電所を視察(3月18日)

碧南火力発電所ではアンモニア混焼の商業化に向けた取組が進んでいます。まずは石炭に20%のアンモニアを混ぜて運転、段階的にアンモニアの比率を上げ、最終的にはアンモニアのみを燃料とすることで石炭火力の脱炭素化を目指しています。グリーンアンモニアをどのように調達するのか、発電コストをどのようにして下げるのかなど、多くの課題の克服が必要です。