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2020.05.12

いのちを守るために、いまこそ、ICTの積極活用。新型コロナウイルス感染症と向き合うための仕組み

新型コロナウイルス感染拡大に伴い、情報管理に関する課題が顕在化しています。世界各国では最新の情報システム技術(ICT)を活用して、様々な課題に対応しているにもかかわらず、例えば日本は未だに感染者の把握と追跡が手作業で行われていたり、陽性率が割り出せなかったりと、情報管理・共有に関する問題が発生している。

今後、長期化も予想される、新型コロナウイルス感染症対策において、情報システム技術(ICT)の有効活用は極めて重要です。調査と提案を進めます。

1.情報管理ニーズについての整理

これまでの世界各国の対応状況、日本の問題点等に鑑み、医療分野を中心に必要な情報管理についてまとめます。これらは一例です。ICT活用の余地は広がります。

  • 感染者の情報管理

感染者の情報について管理・共有するシステム。いつ、どこで、どのような感染が発生したかを地理情報システム(GIS)を使用して把握する。一人ひとりの感染者を追跡して、感染、治療、回復、社会復帰までをトラッキングする。地域のエリアごとの感染リスクを共有する。GISの活用は世界のスタンダートなっています。

  • 濃厚接触者の把握

確定した感染者に対して濃厚接触者を把握するためのシステム。感染が確定した時点で、その感染者に潜伏期間も含めて一定期間、濃厚接触にあった人に対して警報を流す。政府も個人のスマホの記録を使った追跡システムの導入を進めようとしている。シンガポールの事例などが有名、日本もシンガポールのシステムを参考にしています。

  • PCR検査の管理

PCR検査の実施に関する情報管理システム。どの機関でどのくらいの処理能力があるのか(人的能力も勘案)、どのくらいの検体を処理中なのか、受入と結果(陽性率)の把握ができるようにする。正しく陽性率を割り出す。どのくらいの処理余力があるのかを全国で共有して効率的、効果的に能力を活かし検査実施数を伸ばす。今後、実施される抗体検査についてもシステムによるサポートが必要である。

  • 医療キャパシティ管理

病院の感染症対応病床数、人工呼吸器、人工心肺の数、医師、看護師等の人数、その使用状況、勤務状況等をリアルタイムで把握するシステム。また無症状・軽症者の宿泊施設のベッド数・使用状況を管理。行政の枠を超えた共通のデータベースとして管理する仕組みが必要。合わせて、今後、使用が始まる抗ウイルス薬、ワクチンなどの管理についてもシステムの活用が必要である。

  • 衛生材料の需給管理

マスクやガウンなど医療材料の需給を管理するシステム。医療現場、介護現場などの「需要」を把握し供給とのギャップを把握する。「供給」については、国内生産、輸入などを進める企業、物流を担う企業とデータを共有して管理する。現場の在庫管理、発注作業も効率化できる。

2.情報共有および個人情報保護の必要性

(1)  現状

  • 日本では感染の状況ついて、感染者の個人情報保護、感染が発生した施設等への風評被害の回避のため、原則として自治体名と人数が明らかにされのみである。情報の発表の仕方も自治体毎に異なる。
  • そのために、感染者とは知らずに接触してしまう、あるいは感染の発生した施設と知らずに入るなどといったことから感染拡大が発生している。
  • 医療従事者やその家族への差別的な対応、感染が発生した施設や商店等に対する偏見、誤解に基づく回避行動等、国民の間に感染に関する間違った考え方が存在しており、正しい情報開示の妨げになっている。

(2)  必要な処置

  • 感染に関わる情報を国のレベルで一定のルールに基づき管理し、感染者の管理、地域の安全の確保に繋げる必要がある。情報の公開については、公開に伴う影響にも配慮して実施することになるが、国民の理解を前提に感染予防の観点から必要な情報は積極的に開示されることが好ましい。
  • 海外では、GIS(地理情報システム)を活用し感染者の管理を行っている。たとえば、香港の例では、感染者について、名前以外、性別、年齢、居所などが特定されており、どこにいて、何時感染したか、どこの病院にいるか等、一人一人の情報がGISで管理公開されている。
  • 感染者に対する国民の差別や偏見に基づく行動を無くすために、新型コロナウイルスに対する正しい知識の提供、啓発活動が必要である。
  • 政府が法的根拠に基づかずこうしたシステム導入を進めることには問題がある。自由を侵害しない行動追跡システムの構築を可能にする情報法制を整備することが急務である。以下のような点を規定すべき。

    ○ 国民の協力・同意

    ○ 使用目的の限定

    ○ 収集する情報の限定

    ○ 情報の匿名化ルール

    ○ 情報の削除

    ○ 情報を取り扱う者の特定、責任