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2021.10.19

「自然エネルギー立国」へのロードマップ:エネルギー転換戦略 [2]

5つの重点施策、35の目標と政策を提案します。

1.気候危機に歯止めをかける、グリーン・リカバリーで元気な日本を取り戻します

 巨大化する風水害、山火事の頻発、低地を襲う高潮など、気候変動に起因する災害が頻発しています。気候危機は人間を含むあらゆる生命の存続にとって脅威となっています。一日も早い脱炭素社会の実現で、気候危機に歯止めかけると共に、化石燃料から再生可能エネルギーへのシフト、社会全体のグリーン化への投資によって、コロナ禍で低迷する日本経済の再生を実現するグリーン・リカバリーを推進します。

  • 2030年に温室効果ガス排出を55%以上削減(2013年比)、2050年までのできるだけ早い時期に温室効果ガス排出ゼロの脱炭素社会を実現、気候危機に歯止めをかけます。
  • 2030年までの期間に公的資金50兆円を集中的に投入、脱炭素社会を実現するとともに日本経済の構造変革、日本産業の成長分野における競争力強化を実現します。必要な資金を基金化することにより、機動的な財政支援を実現します。
  • 産業社会のグリーン化を推進することにより、再生可能エネルギーや蓄電技術など新しい成長産業分野において250万人の新たな雇用の創出を目指します。
  • 再生可能エネルギーへのシフトにより、エネルギーの海外依存を低減、エネルギー安全保障を強化します。化石燃料輸入を低減することにより海外流出していた資金を国内で循環させ日本の経済成長に繋げます。

2.エネルギー消費60%削減、再び世界一の省エネ大国を目指します

 省エネルギーは脱炭素社会を実現する上で、もっとも有効かつ合理的な取り組みです。異なる部門ごとに、コストパフォーマンスの高い省エネ施策を実施することで無理なく、省エネを深掘りすることが可能です。省エネへの投資は生産性の向上につながります。

  • 省エネルギーの取り組みを強化して、2030年に最終エネルギー消費30%削減(2013年比)、2050年には同60%削減を目指します。
  • 家庭、業務部門においては、遅れている建物の断熱化・ゼロエミッション化を推進します。建替のタイミングでの義務化、補助金・税制優遇、省エネ努力の見える化により、2030年に全建物の10%のゼロエミッション化を実現します。地域の工務店・建設会社の参入を実現して地域経済の活性化に繋げます。特に国の公共施設については、省エネ化を義務づけ、エネルギー消費の削減のモデルとします。また、省エネに関わる技術開発(遮熱材など)を支援、効果的な技術の導入を促進します。
  • 家庭部門にあっては、住宅の断熱化・ゼロエミッション化により、快適で健康にも良い住環境の実現を目指します。省エネには消費者である国民一人一人のライフスタイルの転換も必要となります。各種補助金や情報提供など消費者に直接届く支援策を充実します。
  • 運輸部門においては、乗用車、バス、トラックなど特性に合ったエネルギーシステムへの切り替えを促進します。電動車への買い換えを支援します。特に、CO排出ゼロのEV、FCV、水素エンジンへのシフトを推進します。充電インフラ・水素ステーションについては、それぞれの活用動向を注視しつつ国策としてその整備を進めます。鉄道、船舶、航空機については、省エネ・電化を進めると共に、2050年までに水素活用等新技術導入により脱化石燃料を実現します。
  • 特に乗用車の電動車への買い換えについては、購入代金だけでなく燃料費・メンテナンスコストなど維持費も含めたトータルコストでのメリット、充電設備の利便性の向上(集合住宅における充電設備の普及支援等)など買換のインセンティブが高まるような施策を充実させます。
  • 産業部門については、補助金、税制優遇等の施策を充実させ省エネ設備への更新を促進、2030年に全工場の80%で優良工場並のエネルギー効率を実現します。製鉄業においては、鉄製品のニーズとの整合をとりつつ、電炉へのシフト、高炉における水素還元などの新技術導入を国として強力に支援します。

(続く)