脱原発は無責任?原発問題で問われる「責任」とはなにか?

2012年12月30日(日)

「我々は責任ある立場として、(原発をなくしたいという)希望の段階で、ただちに政策にしていくということではない」「責任あるエネルギー政策を進めていく」と福島第1原発の視察後に語ったとされる安倍総理。

原発の問題を正しく理解しているとは到底思えない。安倍総理が言う「責任」とは何か。電力供給を守るために原発を動かし続けるのが責任ある政治といいたいのだろう。いま原発問題で問われているのは、国民の命や地球の未来を守る責任。電力供給に対する責任とどちらが重要と考えるのか。原発は言うまでもなく事故を起こせば福島のような甚大な放射能による汚染を広範囲に長期間もたらし続け多くの国民の命や健康を脅かす、たとえ事故を起こさなくても使用済み核燃料のような大変危険な核のゴミを生み出し続ける。電力供給は勿論大切ではあるが、電力供給の原発に代わりうる技術はいま多く存在している。それぞれ一長一短があってもその短所を乗り越えてゆくことが新しい持続可能で安全安心なエネルギー源を得ることにつながる。まさに未来につながることである。原発に代わる省エネ、節電の徹底、再生可能エネルギーや高効率の火力発電所の活用に責任を持つ政治が今求められているのではないか。原発に未来はない。
「原発をなくしたいという希望」、原発をなくすことを無責任な根拠のないものと言いたいのか。これもとんでもない話。「原発をなくす」ことがいま日本の政治家に課されている最大の責任に他ならない。日本だけではなく世界の原発をなくすことが日本の責任である。唯一の被爆国である日本。広島、長崎、第5福竜丸事件、そしてあの福島原発事故を経験してしまった日本こそ世界に対して脱原発、核にない世界の実現を訴えていかなければならない。中国や韓国の原発は他国の原発で事故が起きても関係ないとでも考えているのか。確かに日本の電力会社に事故の責任はないないかもしれないが、事故の被害は間違いなく日本に及び、日本海のみならず日本全土に放射汚染が広がる。(参考:http://tomtittot.asablo.jp/blog/2012/03/16/6378298)こうした危険を認識せずに原発推進の政策をとろうとする政治こそ無責任の極みではないか。
さらに、使用済み核燃料や廃炉後の放射性廃棄物の処分・管理をどうするのか。トイレのないマンションと言われる原発を動かし続けることでこうした核のゴミは増え続ける。行き場のないやっかいな核のゴミをどうするつもりなのか。こうした問題の先送りこそ、無責任というのではないか。多くの脱原発を願う国民はこうした事実を良く理解している。その上で訴えていることを安倍総理は認識しているのか。単なる「希望」なのではない。(そうだとしてもその希望をかなえるのが政治だと思うが)まさに国民の「責任ある選択」として脱原発を訴えている事実を理解しなければならない。

免震重要棟での発言「これだけ大規模な廃炉作業は人類史上初めての挑戦だ。みなさんの挑戦が成功して初めて、福島の復興、日本の復興につながる」

はたしてこの福島原発事故の現状を廃炉作業と言えるのか。溶け落ちた燃料はいまどこにあるかわからず、冷却のために日々増え続ける汚染水、除染作業も進まず、避難者の方々の未来が失われてゆく、原発事故はいまだ収束しておらず、事故の緊急対応が続いていると認識しなければならない。これ以上放射能汚染を広げないために何ができるか、続いている余震や予測不能なリスクに対して不安定で危険な福島原発をいかにして守るか、被災者のみなさんの健康、暮らしをどう守り再建するのか、廃炉などという言葉では片付けられない困難な作業を一つ一つ積み重ねて行かなければならない。(民主党政権にもできなかった)そういった認識をどれだけ安倍総理はお持ちか、どれだけ本気で政治の責任として取り組むのか、いま問われている。
「みなさんの挑戦」とあるが、結局、責任を転嫁しているのではないか。あくまでも国民も含めて「わたしたちの挑戦」でなければならない。これから長期間にわたって続く高濃度に汚染された地域での作業に誰が従事するのか、作業員のみなさんを確保するのも困難、人権問題にもつながる危険。原発事故の恐ろしさ、悲惨さはこれからも深くなるばかりではないか。(参考: http://www.nikkei.com/article/DGXDZO50102830Y2A221C1EL1P01/

朝日新聞 2012/12/30 朝刊

脱原発で30年。山崎誠はぶれません。
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山崎誠

山崎 誠

(やまざき まこと)

衆議院議員 立憲民主党神奈川県第5区(戸塚区・瀬谷区・泉区)総支部長。

立憲民主党政務調査会副会長、エネルギー調査会事務局長。経済産業委員会、東日本大震災復興特別委員会委員。

環境・エネルギー・地方創生・社会保障政策・教育政策を中心に活動を展開。

元横浜市会議員、日揮株式会社、株式会社熊谷組勤務。

山崎誠政策研究所代表、森びとプロジェクト委員会顧問、よりそいサポートネットワーク事務局長等

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