山崎誠政策研究所通信007号(20190806)
対立が深まる日韓関係、日本外交に出口はあるのか
日韓関係が最悪の状態です。日本製品の不買運動、日本への観光旅行の中止、子どもたちの交流事業などの中止等、経済的社会的痛手、国民感情の負の連鎖が広がっています。外務省、経産省の担当者から事実関係、経緯の説明を受けました。
外務省からは旧朝鮮半島出身労働者問題(徴用工問題)について、外務大臣談話(2019年7月19日)にもある以下の経緯を再確認しました。
・1965年の国交正常化の際に締結された日韓基本条約、日韓請求権協定(日本から韓国に対して、無償3億ドル、有償2億ドルの経済協力を約束、日韓両国・国民間の請求権に関する問題は「完全かつ最終的に解決」されているとする)が日韓関係の基礎となってきたこと。
・昨年確定した日本企業に対して損害賠償等の支払等を命じる一連の韓国大法院判決は日韓請求権協定に明らかに違反しており日韓の友好協力関係の公的基盤を根底から翻すものであること。
・日韓請求権協定に基づいて協議申し入れるが動きもない。そうした中、裁判所による財産差押え手続きが進む、協議に続く仲裁付託を通告するも手続きに従おうとしない。
確かに韓国の対応には問題が多く、法的安定性が崩れていることは大変憂慮すべき事態です。韓国に対応を求めることは続けなければなりません。
しかし、一連の日本政府の対応についても緊急で点検が必要です。韓国の国内情勢をどう読んで対応するか、特に裁判に関わる一連の動き、反日的なメッセージを国内支持に繋げようとする姿勢等、韓国特有の背景についてどう対応するか。短時間に追い込みすぎていないか。外務省の担当者は水面下で協議を重ねていると言いますが、対立のエスカレーションをどこかで食い止める必要があります。日本の一手一手に韓国がどう応じるかを予測し、見極める必要があります。不信のために最適解をとれない囚人のジレンマ的な状況ではないか。
日本企業のために対立ではなく日韓協調を
経産省による韓国向け輸出管理の運用見直し(フッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素の個別輸出許可への切り替え、いわゆる「ホワイト国」からの韓国の除外)について、上記の徴用工問題に対する対抗措置と見られても仕方ない流れになっていないか。経産省はあくまでも今回の措置は安全保障上の必要からとられたもので、対抗措置的なものではないと主張しますが、説明を聞いてもなぜいまこういった処置が必要なのか、納得のできる答えをもらえません。
例えば「ホワイト国」からの除外について、政策対話が一定期間開かれておらず信頼関係が損なわれていると言いますが、どのくらいの期間対話が閉ざされてるのか、韓国は2004年から「ホワイト国」に指定されていますが、過去はどうだったのか、こうした問いに経産省の担当者は答えることができません。これでは韓国狙い撃ちの措置と言われても仕方ないのではないか。
また、こうした運用見直しは普通の対応に戻すだけであり、グローバルサプライチェーンに与える影響は小さいと説明しますが、韓国の反応は大変厳しいもの、こうした認識の乖離についてどう考えるのか。韓国はこうした措置を逆手にとって日本への対抗を強めてくるのではないか。
日本企業への影響について確認しましたが、例えば上記の3品目のど売上げはいくらか、今回の措置で売上げ減になる可能性は、その額はどう予想されているのか、といった問いについて答えがありません。これではとても日本産業を守ることはできないのではないか。
冷静に日本企業と韓国企業の位置関係を分析したうえで政策を考えるべきではないか。現在、半導体製造の主役は韓国企業であり、日本企業はそうしたリーディング企業に素材を提供する立場になっている。素材一つ一つは確かに重要ですが、そうした素材が意味を持つのは半導体チップなどの製品があるからであり、主導権は韓国企業にあるという事実。日本企業と韓国企業が協力することで世界市場で存在を示すことができるのであり、そうした関係を深めることが日韓企業双方の利益に通じると言えるはずです。
対立からは何も生まれない、日本産業の衰退に拍車をかけるだけの政府の対応を質していきます。改善への糸口をみつけたいと思います。
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