岐路に立つ日本、失われた政治
日本の政治は決定的な機能不全となり、政治情勢は混沌としている。時代の転換点、文明の岐路に立たされているいま、政治は、日本の未来について語り、議論し、新たな国の形を提示し、国民のコンセンサスを得るための努力を尽くさなければならない。しかしながら安倍政治にはそうした新しい発想は皆無、ひたすら時代の逆行の中に解決策を見いだそうとし、国民を無視した独善的な権力行使が続いている。こうした政治は一刻も早く正さなければならない。
経済成長至上主義の弊害
人口減少の局面に入って、縮小する経済の中でも均衡のとれる定常型社会を目指すべきであり、新しい富の再配分の機能が必要である。富の総量を増やすことよりも限られたパイの中でサービスの質を高めることが求められる。しかし安部政権は経済成長依存型の旧来の社会モデルのまま突き進もうとしている。縮小する国内市場に代わる市場を海外に求め、そのためにTPPといった枠組みにすがろうとしている。その結果、日本の農業の衰退、雇用や医療・保険といった日本社会の基盤の喪失に直面することになる。経済格差は広がり、たとえ経済のマクロの数字は良くても(このままでは近い将来、マクロの数字も維持できなくなる)、個々の家計は火の車といった「不幸せな社会」を生み出そうとしている。
エネルギーの分野でも、日本は世界の潮流に完全に乗り遅れている。世界ではエネルギーの消費と経済成長のデカップリングが進み、エネルギーの大量消費に依存しない経済が確立されつつある。自然エネルギーを最大限利用して、化石燃料による電源を補完的に使用する考え方が主流となっている。日本はどうかといえば、安倍政権は、ベースロード電源として原発による発電を維持(2割程度)、自然エネルギーにはキャップをかぶせるエネルギーミックスなるものを決定してしまった。まさに時代の逆行、原発再稼働とともにエネルギーの先祖帰りが始まるのが日本である。
いまの時代こそ価値がある、日本の平和主義
安全保障に関しても同様である。日本は戦後70年にわたり軍事力によらない平和構築につとめてきた。日本ならではの国際貢献は世界的に高く評価されるところである。その根元は先の戦争に対する真摯な反省と平和憲法の存在であり、時代の変化にも耐え平和の理念を守ってきたことによる。日本は個別的自衛権を行使するための実力組織として自衛隊を保有している。こうした実力組織が存在しつつも、戦争をしない平和国家として国際社会で受け入れられてきたのは、平和憲法のおかげであり、現実と理念の不断の調整努力の賜といえる。こうした軍事力によらない平和構築の理念を壊そうとしているのがいまの安倍政権である。
安倍政権が盛んに主張する抑止力の論理は、国際政治上は過去の議論ではなかったか。軍事力による抑止力の理論は軍拡競争につながり、果ては核兵器の開発競争、地球を何度も破壊できるほども核兵器の配備へとつながったのではなかったか。米ソ冷戦の終結とともに、抑止力論に代わる相互依存や国連による平和といった考え方が重要性を持ってきた。国際社会において、国益追求の力学は変わらず、社会的対立も後を絶たず、平和構築の取り組みも息詰まることたびたびとはいえ、その打開策としての軍事力の行使がその後の平和な社会の実現につながった例は皆無である。私たち日本の選択はこうした大きな文脈のなかで議論され見いだされなければならない。近視眼的な脅威論に終始して、国際社会の目指すべき本道を踏み外そうとしているのが今の日本ではないか。安倍政権が進める安保法制には絶対に反対である。
どうやったら近隣諸国の拡張主義的な動きに歯止めがかけられるかを真剣に議論すべきである。少なくとも安倍政権の安保法制によってそうした動きが止められるとは思えない。むしろ逆効果になることすら懸念されるところではないか。経済の場面ではいわゆる「爆買い」観光客を歓迎し、一方、安全保障の議論では仮想敵扱いをする、こうしたご都合主義の日本を国際社会はどうのようにみるだろうか。
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